「キモかわいい」と言われていたのも遠い昔。近年はすっかりハゲをいじられるようになってしまったアンガールズ田中卓志さん(46歳)。
そんな田中さんが、文芸誌『小説新潮』の連載の中で、ハゲにまつわるデリケートな問題についてつづっていました。
「ハゲっていう言葉は使わないで、薄毛という言葉を使ってください」番組の打ち合わせで言われた一言である。
つかみが抜群の一行で始まったハゲ必読のエッセイの一部を、ハゲルヤ読者のみなさんにお届けします。
「ハゲ」はNG その理由は?
ある番組の収録前の打ち合わせで、ハゲではなく薄毛という言葉を使うように言われたという田中さん。その理由として
「最近のコンプライアンス的に、ハゲと言うとちょっと強い言葉になってしまい、髪の毛が薄い人が不快な思いをすることもあるので、そこは『薄毛』でお願いします」と説明されたそうです。
ハゲはNGで薄毛はOKって、なんで?
釈然としない思いを抱えたのは田中さんも同じく。
しかしこれには「薄毛の人が皆、それぞれ歩んできた薄毛人生の中で作り上げられた、繊細なガラス細工のような感情を持っているからなのではないか」と田中さんは考えました。
20代前半、おでこの広さに気付く
では、田中さんの薄毛人生を振り返ってみましょう。
田中さんが薄毛と気付いたのは、20代前半。
柳葉敏郎さんのように前髪を立てた髪型にしたいと思ったものの、おでこが広すぎて思うようにならなかったことがキッカケで「あれ、もしかして、薄毛?」と気付いたんだとか。
柳葉敏郎さんのように前髪を立てた髪型にしたいと思ったものの、おでこが広すぎて思うようにならなかったことがキッカケで「あれ、もしかして、薄毛?」と気付いたんだとか。
それから始まる薄毛対策の日々。
- くしで前髪の生え際をトントンと叩く
- お風呂で指の腹を使って頭皮を優しくマッサージ
しかし、そう簡単に努力は実を結ばず。自分の部屋の隅に落ちた大量の抜け毛が、小さなカツラのようになっていたことも。
薄毛 vs. 母と息子の戦い
田中さんが薄毛を心配していることに気付いた田中さんのお母さんは、毎月の宅急便の中に市販の育毛剤を入れるようになったといいます。
2021年にお亡くなりになった田中さんのお母さんは、バラエティ番組でも息子を想う姿が度々見られましたが、育毛剤まで送っていたとは。
母親から、毎月育毛剤が届くことを想像してみてください。それが母の愛と分かりつつも、ストレスとプレッシャーに押しつぶされそうです。
ある時は「テレビで生姜がハゲに効くと言っていた」と、生姜の絞り汁が送られてきたんだとか。藁にもすがるような気持ちだったんでしょう。
お母さんは、最終的に「あんたのカツラを作るために髪を伸ばしとるけぇ」と自分の後ろ髪を伸ばし始めたと言います。
親の愛ってありがたいですね。
ハゲはウケると気付いた日
毛髪の神様に見放されたアンガールズ田中さんでしたが、笑いの神様には愛されていました。ハゲネタはお笑い界では強力な武器となるのです。
田中さん自身も薄毛がウケるとわかると、「今まで薄毛を隠してきた自分は一体なんだったんだろう」時には「薄毛の方がいいじゃん」とまで思うようになったといいます。
しかし、これは芸人ゆえの薄毛の活かし方。「薄毛よりもハゲという響きの方が面白い! ハゲって言ってくれよ!」とは、なかなか一般の我々には理解しがたい感情かもしれません。
いじってOKな人、NGな人
事実、薄毛の芸能人の中にもいろいろなタイプの人が存在しました。
田中さんいわく、いじってはダメな人の代表は「植毛をして必死に隠そうとしている人やカツラを被っている人」とのこと。そして、いじってもいい人の中にも実に様々なタイプが!
- 誰に何を言われてもいい人
- 身近にいる人には薄毛いじりをされてもいいけれど、あんまり関係性がない人に薄毛をいじられると嫌な人
- 前はいじられても良かったけれど、最近はダメな人
- ハゲの人に言われるならいいけれど、フサフサの人に言われるのはダメな人
- ハゲいじりがウケていればいいけれど、滑ったらダメな人
うかつな薄毛いじりが、いかに危険か。許されるラインを見極め薄毛を笑いに変えるのが、いかに難しいか。それは、「薄毛の人が皆、それぞれ歩んできた薄毛人生の中で作り上げられた、繊細なガラス細工のような感情を持っているから」なのでしょう。
温厚なIKKOさんがハゲいじりでブチギレた、という事件も、そんなことから起きてしまいました。
なによりテレビでハゲをいじられてもいいと言っている田中さん自身も「前頭部のハゲをいじられるのはよくても後頭部のハゲはいじられたくない」んだとか。
ハゲそれぞれの「繊細なガラス細工のような感情」ハゲルヤ読者のみなさまなら分かっていただけますよね。
あなたのハゲいじりは、どこまでならOK? 新たな年を迎えたこの機会に、自分の中の境界線について考えてみるのもいいかもしれません。